全国コットンサミットとは

はじめに

全国コットンサミットは、おもに綿花栽培を手掛ける人々が集い、語らい、国内における綿花栽培の普及をとおして、農業、教育、福祉にかかわる様々な社会的課題の解決につなげていくことを目的として、2011年に大阪府岸和田市で始まりました。
天理大会で第10回を数えます。この機会にこれまでの歩みをふりかえりつつ、創設の理念や開催の意義などについて紹介いたします。

はじまりの物語

平成21(2009)年秋、私(編註:辰巳美績氏)の畑で育った”わた”を収穫していた時に大正紡績の近藤健一さんが「辰巳さん、日本全国にはわたを栽培しているグループがたくさんあるでしょう。 これらのグループを一堂に集めて苦労話や困ったこと、また、将来の方針などを話し合う場をつくってはどうですか」といわれた。 そこで、私は早速、岸和田市の野口市長に相談。市長は「大いにやってほしい」と協力を申し出られた。このことをすぐに柳曽商工会議所会頭に伝えたところ、会頭も「市が賛成するなら心丈夫だ。 会議所としても積極的に取り組みましょう」といわれた。 善は急げで、早速、準備委員会を設置。 リソースセンターの松田社長の協力をお願いし、足掛け3年がかりで全国のわた栽培同好者団体からアンケートの回答を得ることができた。
北は北海道から南は九州まで64のグループから大きな反響をいただいた。
こうした皆さんの協力のもと、全国コットンサミット実行委員会を立ち上げ、私がその実行委員準備委員長なった。

こうして平成23(2011)年5月21日、岸和田にて第1回サミットをようやく開催するに至った。会場には各市長、会議所会頭をはじめ経産省の課長も含め全国から250人以上の人たちが足を運んでくださり、盛大に行うことができて主催者代表として大いに面目を施すことができた。

※出典:辰巳美績『「運」、「鈍」、「根」~なにくその精神~』(2016年、自伝、非売品)185~188頁

サミットの目標・狙い

  1. 全国に綿花栽培を普及し、ものづくり再考、生きがいづくりを行います
  2. 全国の栽培者をネットワーク化し、情報共有と新たな価値ムーブメントを引き起こします
  3. 地域発信の機会を尊重し、地域を元気にします
  4. エシカル・コンシューマリズムを満たすものづくりを目指します
  5. 農業支援と耕作放棄地の解消に役立ちます
  6. 東北など被災地支援を行います

社会的課題の解決

我々は、綿花栽培によって下記の社会的課題を解決できるものと確信しております。

  1. 国内で綿花栽培を行い、糸作りへの工程を「見える化」することで、繊維関係者や専門家、市民、子供たちに素材知識について実学を通じて学べる場づくりを行います
  2. 国内で綿花栽培、綿の収穫、紡糸といった原料生産を行うことで、「綿花高騰による海外からの調達困難について一部解消」、「安心安全な原料づくりとプレミアム性の実現」を行います
  3. そうすることで、エシカル・コンシューマーへの要望に応えます
  4. 農地に近い放棄地を管理することで、農業への被害を軽減します
  5. また、高齢者をはじめとする様々な年代が持つ土いじり、植物栽培などの生きがいづくりの場を提供します

現代・近未来の社会動向

ものづくりの現場では、「国内空洞化」、「素材知識の不足」などにより、ものづくりの質があやぶまれつつあります。一方、「天然素材への要望」は高まりつつあります。また、社会は人口減少(オーナス)動向に向かっています。2004年をピークとして日本国内の人口減少に歯止めがかからず、今後消費の大きさが縮小してくると思われます。そのため、いいもの・確かなものを少なく所有し、身に着けたいといった感覚が高まるはずです。つまり、「プレミア感の高い商品の要望」が高まることと思われます。そのため、オーガニックやエコを意識した倫理感の高い消費、つまり「エシカル・コンシューマリズム」も高まるはずです。高齢化とともに家庭菜園数は増加し、野菜などものづくりの喜び、いきがいづくりとして植物栽培や土いじりに注目が集まっています。子供たちへは、コットンボールから、綿糸が作られ、それが身の回りの服になっているなど、ものづくりの基礎を教える必要があります。子供たちだけでなく、我々大人も同様です。農家は高齢化が進み、我々の食を担う農地は荒れ、「遊休地」や「耕作放棄地」が増加の一途です。そのため、いのししなどが作物を荒らすなど農業への被害が深刻になっています。

想定される社会的課題

前段に触れた社会動向においては以下の課題を抱えています。

  1. ものづくりにおける素材知識の不足
  2. 素材を輸入のみに傾斜しすぎて起こる為替変動、資源高騰による調達リスクの増加
  3. ものづくりの国内空洞化と雇用不安
  4. 都市近郊農業の弱体化と耕作放棄地増加、農業被害

全国コットンサミット開催の意義

綿花栽培者が増加しています、直近3年をみれば綿花栽培面積は約3倍以上となっています。(全国コットンサミット実行委員会による栽培者へのアンケート調査によると、2009年:2.4ha、2012年:7ha,2014年:18haを超える)

そうした中、栽培者及びプロジェクトは「栽培技術の未熟や知識の不足」、「事業継続の困難性」など様々な課題や悩み、また社会的認知欲求を得たいと考えています。
全国に20を超えるプロジェクトの主催者が一堂に会し、それぞれが「目指す志」、「事業の課題」などを情報交換し、切磋琢磨することがお互いの課題解決へのヒントになり、やる気を喚起し、それがひいては各地域での社会課題の解消に結実するものと考えました。
そうした場の提供、ネットワークづくりの機会が「全国コットンサミット」です。

サミット実行委員会事務局の体制

  1. 全国コットンサミット実行委員会は、任意の組織です
  2. サミット開催に当たっては、開催地の自治体および商工団体などが一体となって各実行委員会を結成し、サミット開催にいたります
  3. 全国コットンサミット実行委員会事務局は、本部組織に当たり、各地で開催に当たる実行委員会の補佐を行うともに、サミット活動のブランディング、広告宣伝、情報発信を担います
  4. 東北コットンプロジェクトに人を派遣し、被災地支援を人にて補完します

統一ロゴの説明

全国コットンサミットは、ここに記す、ロゴをイメージとして活動しています。2011年に名取市、仙台市荒浜に、東北コットンプロジェクト支援のために現地入りした際に、被災地を綿で元気づける意味をもって、大漁旗をこのロゴにて作成したのがきっかけにしています。

全国コットンサミット統一ロゴ
日本全国の田畑で綿花が栽培されていくイメージを日本列島の中に綿のマークで表現しています

活動実績

サミット事務局の活動実績

2011年5月第1回「全国コットンサミットin岸和田」開催
場所:大阪府岸和田市、動員数:700人
プログラム:コシノユマさん、近藤健一氏の対談 全国の栽培者の報告
6月「東北コットンプロジェクト」立ち上げ参画
東北コットンプロジェクトその他技術指導、催し参加
2012年3月サミット実行委員会事務局 報告会見
場所:中之島公会堂(大阪市)
5月「東北コットンプロジェクト」種植え等 参加
10月第2回「全国コットンサミットin境港市」開催
場所:鳥取県境港市
動員数:700人
プログラム:「東北コットンプロジェクト」の報告、繊維関連企業パネルディスカッション
10月「東北コットンプロジェクト」等 収穫参加
2013年5月「東北コットンプロジェクト」種植え等 参加
10月サミット順延(台風接近)
12月第3回「全国コットンサミットin広陵町」開催
場所:奈良県広陵町
動員数:700人
プログラム:奈良県でのコットン栽培と製品化の取組報告、東北コットンプロジェクト農家の報告、パネルディスカッション
10月「東北コットンプロジェクト」等 収穫参加
2014年10月第4回「全国コットンサミットin蒲郡市」開催
場所:愛知県蒲郡市
動員数:1000人
プログラム:製品化をテーマに、栽培から事業化への試みを報告しあう。パネルディスカッションなど
12月「東北コットンプロジェクト」等 収穫参加
2015年開催調整未達
2016年9月第5回「2016全国コットンサミットin信州高山」開催
場所:長野県高山村
動員数:700人
プログラム:基調講演(近藤氏、皆川氏)、パネルディスカッション(下坂氏、高澤氏など)、取組報告
7月「2016全国コットンフェスティバルin阪南」開催
場所:大阪府阪南市
動員数:1,000人
プログラム:基調講演(日比暉)、対談(小篠ゆま、近藤健一)、パネルディカッション、製作発表(佐野工科高校、上田安子服飾)、「東北コットンプロジェクト」報告、市内取組み報告
2017年9月第6回「2017全国コットンサミットinかこがわ」開催
場所:兵庫県加古川市
動員数:700人
プログラム:「コットンと寄り添う生活」(歌手 八神純子・わたばな工房 藤原晶子)、コットン対談(近藤健一・加古川市長 岡田康裕)、加古川こっとん物語(講談師 旭堂南海)
綿まつり:志方町会場
2018年9月第7回「2018全国コットンサミットin福島 いわき」開催
復興へ、コットン栽培とものづくり 会津から中通りそしていわきへ
場所:福島県いわき市
動員数:1,000人
プログラム:
〇基調講演「メイドインジャパンとエシカルを”消費”すること」〇東北震災復興の現状と課題
〇全国先進事例報告
〇福島事例報告
〇各分科会
〇各種ツアー
・福島の綿花栽培とものづくりの伝統を訪ねるツアー
・福島浜通りの今を知るエクスカーション
2019年
2020年
2021年
開催調整未達
2022年11月第8回「2022全国コットンサミットin松阪」開催
オーガニックコットン及び国内における綿花栽培、紡糸などの原料生産の更なる発展を図るとともに、三重県松阪市の伝統工芸品「松阪もめん」を広く、全国のみなさまに向けてPRする
場所:三重県松阪市
動員数:1,000人超える
プログラム:
〇基調講演「松阪もめんのルーツを探る」
〇地域活動報告
〇パネルディスカッション
〇松阪もめんトーク
〇松阪ファッションショー
〇機織り体験等
・松阪市内各所で、街角イベント、「松阪もめんフェスティバル2022」開催
2023年11月第9回「2023全国コットンサミットin東松島」開催
東日本大震災からの復興・日本一の綿花栽培地への歩みを振り返るとともに、福島県東松島市での綿花栽培と次世代への継承、全国の関係者との情報交換を図る。また、今回は、「2023 東北コットンフェスティバル」も土曜日に開催する。
場所:福島県東松島市
動員数:400人
プログラム:
第一部 「東松島とコットン」、
第二部「東北コットンプロジェクトの成功と課題」、
第三部 「東松島コットンアイデアコンクール」
・東松島市内 栽培地で収穫祭、東北コットンフェスティバル 開催
2024年開催調整未達
2025年
予定
11月「2025 全国コットンサミット in 天理 第10回記念大会」
第10回目の記念大会は奈良県天理市にて開催予定。

サミット出演者一覧 実績

講演者パネラー
2011年
大阪府
岸和田市
・松田正夫(㈱大阪繊維リソースセンター代表取締役)
・宮崎和枝(こっとんふぁーむ花畑鮮花)
・西松豊典(信州大学繊維学部)
・越智直正、島田淳志(タビオ奈良㈱)
・村上恭敏(村上メリヤス)
・村西徳子、原田弥生(NPO 法人河内木綿藍染保存会)
・小野圭耶、丸山千穂、沼田まきこ、糸瀬由香、吉田あゆ美、百山晃喬、松尾風花(大地のぬくもりコットンボール銀行)
・安倍和海(境港市副市長)
・加地善一(豊浜棉の郷推進協会)
・木村元廣(夢つむぎ会)
・小篠ゆま(㈱ユマコシノアソシエイツ代表)
・近藤健一(大正紡績㈱)
2012年
鳥取県
境港市
・赤坂芳則(仙台東部地域綿の花生産組合)
・江良慶介(㈱クルック)・近藤健一(大正紡績㈱)
・佐藤富志雄(有限会社耕谷アグリサービス)
・鳥取県立米子南高等学校
・サムライジーンズ(兵庫県篠山市)
・ジェイギフト(愛媛県今治市)
・三河織物工業協同組合(愛知県蒲郡市)
・和綿倶楽部(茨城県つくば市)
・佐古和枝(関西外国語大学)
・田中博文(鳥取県弓浜絣協同組合理事長)
・樽井廣美(樽井繊維工業㈱代表取締役社長)
・藤澤徹(㈱新藤代表取締役)
・渡邊智惠子(㈱アバンティ代表取締役社長)
2013年
奈良県
広陵町
・稲垣光威(有限会社ファナビス 代表)
・松井俊隆(岡村製油㈱取締役油糧部長)
・村上恭敏(村上メリヤス代表)
・佐藤富志雄(有限会社耕谷アグリサービス代表取締役)、佐々木和也
・江良慶介(㈱クルック 代表)
・近藤健一(大正紡績㈱ 繊維事業本部長)
・越智直正(タビオ㈱ 代表取締役会長)
・大畠諭(西日本旅客鉄道㈱創造本部ショッピングセンター事業統括チームサブリーダー)
・村田浩子(畿央大学健康科学部人間環境デザイン学科准教授)
・野村佳照(ヤマヤ㈱代表取締役社長)
・島田淳志(タビオ奈良㈱研究開発事業部検査研究課シニアエキスパート)
・庄健二(岡本㈱ R&D部研究2課繊維製品品質管理士工学博士)
・酒本昌彦(酒本産業㈱ 代表取締役)
・林輝一(㈱ハヤシ・ニット代表)
2014年
愛知県
蒲郡市
・荻野俊子(有限会社サムライ)
・鷲尾吉正(ワシオ㈱ 代表)
・宮川真紀(合同会社タバブックス 代表)
・松下隆(全国コットンサミット実行委員会事務局)
・名古屋モード学園×ミカワコットンプロジェクト
・松田正夫((一社)日本繊維機械学会「繊維・未来塾」塾長)
・近藤健一(大正紡績㈱ 維事業本部長(兼)東京営業所長)
・稲垣貢哉(興和㈱ 開発生産部生産課課長)
・寺前晋(名古屋モード学園 教務部講師)
・中瀬元(有限会社ナカモリ 代表取締役)
・鈴木敏泰(竹島クラフトセンター 代表)
2016年
大阪府
阪南市
・日比暉(NPO法人日本オーガニック・コットン協会顧問)
・小篠ゆま(㈱ユマコシノアソシエイツ代表取締役)
・近藤健一(大正紡績㈱)
・辻野広二(阪南コットンプロジェクト 阪南市)
・楠田理佳(阪南コットンプロジェクト 阪南市商工会)
・佐々木和也(有限会社耕谷アグリサービス)
・大阪府立佐野工科高等学校の学生による和紙布生地による浴衣製作発表
・学校法人上田学園 上田安子服飾専門学校 ファッションクリエイターコース・メンズ専攻3年の製作発表
・安倍和海(鳥取県境港市副市長)
・荻野俊子(㈱サムライコットン・ファーム取締役)
・島田淳志(タビオ奈良㈱)
・松下隆(全国コットンサミット実行委員会事務局)
2016年
長野県
高山村
・近藤健一(全国コットンサミット実行委員会会長)
・皆川魔鬼子(㈱イッセイミヤケ取締役 企画技術ディレクター)
・近藤健一(全国コットンサミット実行委員会会長)
・下坂誠(信州大学繊維学部長)
・皆川魔鬼子(㈱イッセイミヤケ取締役 企画技術ディレクター)
・高澤史納(㈱高澤織物テキスタイルデザイナー)
・久保田勝士(高山村長)
2017年
兵庫県
加古川市
・「コットンと寄り添う生活」
八神純子(歌手)
藤原晶子(わたばな工房 代表)
・加古川こっとん物語
旭堂南海(講談師)
・「コットン対談」
近藤健一(全国コットンサミット実行委員会会長)
岡田康裕(加古川市長)
2018年
福島県
いわき市
・基調講演
「メイドインジャパンとエシカルを”消費”すること」
山田敏夫(ライフスタイルアクセント株式会社 CEO)、
鎌田安里紗(モデル・エシカルファッションプランナー)
・東北震災復興の現状と課題
江良慶介(kurkku)、吉田恵美子(ふくしまオーガニックコットンプロジェクト)
・全国先進事例報告
根来節子(赤穂段通生産者の会 弥生工房)、佛坂香奈子(弓浜絣工房B)
・福島事例報告
谷津拓郎(株式会社IIE 代表取締役)、酒井悠太(いわきおてんとSUN企業組合)
2022年
三重県
松阪市
・基調講演
「松阪もめんのルーツを探る」
NPO法人 松阪歴史文化舎 理事長 門暉代司
・地域活動報告とディスカッション
司会:松下隆(本サミット事務局本部)
西口裕也(御絲織物(株) 代表取締役)
伊藤訓子(松阪もめん手織り伝承グループ ゆうづる会会長)
亀井静子(亀さんの家 理事)
奥村潔(国際ファッション専門職大学 教授)
・松阪木綿トーク 市内高校生
・松阪もめんファッションショー
地元高校生と、りかりこ(ブランド大使)、加藤ゆうみ(同)による本格的ファッションショー
2023年
福島県
東松島市
・基調講演報告
・全国の綿花栽培圃場を巡って
明神敬一(NPO法人ペットチャルカの広場代表 大阪市)
・綿花栽培の実際とわが社の製品化!
島田淳志(タビオ奈良(株)研究開発担当 奈良県)
・東松島市における綿花栽培と目指すブランド化
赤坂芳則(イーストファームみやぎ代表 東松島市)
パネルディスカッション
稲垣貢哉(東北コットンプロジェクト副事務局長)
藤澤徹(株式会社新藤「天衣無縫」代表取締役)
新山浩児(アーバンリサーチ 事業本部 ディレクター)

運営メンバー

コアメンバー

本部事務局代松下隆 中小企業診断士
名誉会長故 近藤健一 (株)オフィスけんいち
故 辰巳美績 辰巳織布(株) 会長
スタッフ島田淳志 タビオ奈良(株)
明神敬一 NPO法人ペットチャルカの広場 代表

開催地永久メンバー

開催地担当
2011年大阪府岸和田市
2012年鳥取県境港市
2013年奈良県広陵町
2014年愛知県蒲郡市
2016年長野県高山村(9月) 大阪府阪南市(7月)
2017年兵庫県加古川市
2018年福島県いわき市
2019年未開催
2020年未開催(コロナ感染拡大)
2021年未開催(コロナ感染拡大)
2022年三重県松阪市
2023年福島県東松島市
2024年未開催

日常の情報配信

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